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「コーヒー&シガレッツ」粋で絶妙な裏切り [映画/DVD感想]

コーヒー&シガレッツ

コーヒー&シガレッツ

  • 出版社/メーカー: アスミック
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: DVD

「コーヒー&シガレッツ」は2003年の作品だが、内容は過去に撮り溜めた短編集だ。最初に発表されたのは1986年と今から21年前。従って各短編集には時代時代の香りがあり、またその時に同時に撮っている長編作の雰囲気が漂っている。その辺りが同じ短編集でも「ナイト・オン・ザ・プラネット」の様な一つのテーマの中で作られた映画とは違うのだが、あたかも一つのストーリーの様な繋がりを持ってるのも事実であり不思議である。その原因はテーブルを真上から撮る不思議なカメラワークと選曲の素晴らしさ、そしてしばしば共通する話題(倍速の夢、医学と音楽、テスラコイル)にあると思う。そしてコーヒーカップで乾杯する間抜けな仕草。役柄が本人役がなのも共通だ。
 オープニングとエンディングは、キングスメンの「ルイ・ルイ」(IggyPopのカヴァー)。「アメリカン・グラフティ」の卒業パーティーのシーンでバンドがやたらカッコ良く唄ってたのが印象に残ってる曲だ。

 最初のエピソード「変な出会い」では「ダウン・バイ・ロー」で強烈な落ち着きの無さを見せたRobertoBenigniが登場。なぜかコーヒーを一人で5杯も頼み卓上に飲みかけで置いている。意味もなく手が振るえ、緊張しているがその理由は不明のまま、StevenWrightとちぐはぐな会話をする様を描く。「幻覚」にも出て来る、コーヒーを飲むと夢が倍速になるというそんなバカな!話が出る。そして途中で席を交換した後、結局また交換して元に戻るシーンは大笑いした。そして歯医者の予約があるが行きたくないStevenWrightに対して、自分が暇だと替わって行く下りに至ってはもう呆れてしまう。StevenWrightの「微妙に」という捨てゼリフも良い。

 「双子」。「ミステリー・トレイン」で巨大な虫の置物を蝿叩きで叩こうとする仕草が笑えたベルボーイを演じたCinqueLeeが登場。JoinLeeと絶妙なコンビネーションを見せる。
同時に違う答えをするので聞き取れないSteveBuscemiの哀れさがウケる。そういえばプレスリー話は「ミステリー・トレイン」でも出てきたよな。

 「カリフォルニアのどこかで」。「ダウン・バイ・ロー」で首になった冴えないD.Jを演じたTomWaitsがIggyPopと仲が良いのか悪いのかギリギリの会話をする。ジュークボックスに曲が無いと言われたTomWaitsがホントにキレテしまうのかと思うほどほのぼのとした中に溢れる緊張感が良い。ここでは「幻覚」でも出て来る医学と音楽の共通性について言及している。途中からライト光線がバックのハワイアンと供にクルクル壁を回りだすのも二人には余りに場違いで間抜けだ。「煙草を止めたから安心して吸える」と禅問答の様なことを言いながら口の横から実にカッコ良く煙を吐き出すTomWaits。そしてラスト、一人店に残されて曲に合わせて手をユラユラするシーンが最高にキマってる。

 「それは命取り」。穏やかそうなお爺さん二人が、一体何回「ファッキン!」って言ってんだっていうぐらい罵り合う、でものどかな雰囲気っていうどこまでもちぐはぐな展開。全く喋らないで手話の様な仕草をする子供の前でも「ファッキン!ファッキン!」って・・・。でも内容が健康問題だから笑える。日本人を表す時目をつり上げて見せる子供が可愛い。

 「ルネ」。ReneeFrenchの名前そのものが題名になっている作品。ほとんど喋らないReneeFrenchの容姿や煙草を吸いコーヒーをかき回す仕草が最高にセクシー。なぜか見ている雑誌がガンカタログっていうアンバランスさ。まだ出るのか?もう1回ぐらい出るんじゃないかと期待させるE.J.Rodriguezのストーカー的しつこさは男として凄く共感。そこまでされてもカップを手で押さえて平然と帰らないReneeFrenchが図太い。

「問題なし」。冒頭の音楽、スカが効いてて最高にカッコ良い!アメリカの予告版はこの曲を使用しているのも頷ける。サイコロをふるなど卓上の仕草全てが物凄くキマって見えるのもこの曲があればこそだな。最後まで問題ない問題ないと言われればそりゃ気になるわ。

「いとこ同士」CateBlanchetの一人二役は全く気づかず。実に嫌らしくねちねち切り込むいとこのロッカーに事勿れ主義でニコニコ爽やかに対応する有名女優のあやふやなスレスレの会話が緊張感を盛り上げる。有名女優がいなくなった途端煙草を注意されるオチが良い。

「ジャック メグにテスラコイルを見せる」。喫茶店でそんな電磁波バリバリの実験見せられてもなぁ。丸目で驚く店員役CinqueLeeと大真面目なMegWhite、JackWhiteの対比が最高に笑える。冒頭、さりげなく店の片隅に地味に置いてあるテスラコイル(白黒だからゆえ目立たない)をなんとなく神経質そうに、気になってしかたないJack。一方、目を背けていかにも嫌で堪らないといった表情のMegがイイ。実験の始まるとゴーグルをかけたJackが実に活き活きした子供ような表情に変わるのが印象的だ。収支つまらなそうにしているMegが最後的確な意見を出すあたりが「なんだ、やっぱり好きなんじゃん」っていうオチを付けている。「地球は一つの共鳴伝導体」というテーマは最終話にも無意味に出て来る。

 「いとこ同士?」。家計図を見せ夢中になっているSteveCooganに終始引き気味だったAlfredMolinaが、自分のファンの人物がSteveCooganと知り合いだと知った途端、立場がコロっと逆転する瞬間が実にシュール。最後一人で「ドジった」と悔やむAlfredMolinaの姿が実に悲哀というか共感を呼ぶ。機嫌良かったSteveCooganの最後キレ気味な豹変振りが恐い。ああいうことは誰にもあるよな、社交辞令で会えて良かったとか言ってしまうけど電話番号とかは教えたくないなぁっていう関係って。凄い格好で現れた女性ファンも彼を天狗にしてしまった。こじれない様どう断るかは本当に難しい。このエピソードはその失敗の代表例だ。ちなみにこの話だけは紅茶だ。

「幻覚」。「ゴースト・ドッグ」で路上で主人公に突然メッセージを伝えるブラザー、RZAがGZAと供にコーヒーを飲んでいる所へ、最新作「ブロークン・フラワーズ」で日常は冴えないが旅先ではモテモテの中年を演じたBillMurrayがひょっこり現れる。コーヒーをポッドごとごくごく飲み、例の“倍速の夢”の話で、首をびゅんびゅん横に振るBillMurrayの仕草が可笑しい。またしても“医学と音楽の共通性”を語るRZA、咳が止まらないBillMurrayに洗剤でうがいしろといってずらかる二人の悪ガキぶりがウケる。うがいの音だけが最後聞こえるラストもイイ。

ラストエピソード「シャンパン」。最後を飾るに相応しいこの美しい作品は、偏にマーラーの「私はこの世に忘れられ」という曲の悲しいほどの美しさに尽きる。
唐突に「世間に置き去りにされた気分」と語るTaylorMead。その一言一言が胸にキュンと来る。だが慰めもせず淡々と煙草を巻くBillRice。その一見無関心そうな仕草の中にも同僚を気遣う暖かい感情が見え隠れする。紙コップの乾杯、聞こえない筈のマーラーにそっと耳を傾ける地下室の老人たち。酸いも甘いもかみ分けた人生の最後の幸福な一瞬を見事に描き出している。そしてラスト、居眠りしたTaylorMeadにそっと声をかけるBillRice。果たして眠っているのかひょっとして死んでしまったのか?謎を残したまま物語は静かに終わる。

 この映画は、“何か起こりそうなのに最後まで何も起きない可笑しさ”という「ストレンジャー・ザン・パラダイス」以来のジャームッシュ映画のテーマ”観客の期待を裏切る展開”が最高にカッコいい音楽と道具立てと仕草の中にぎゅーっと詰まった濃縮ジュースである。


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