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爬虫類の文明「ヒストリエ」 [書籍/漫画感想]

ヒストリエ vol.1 (1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ vol.1 (1) (アフタヌーンKC)

  • 作者: 岩明 均
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10/22
  • メディア: コミック

 

何が怖いって人の顔が哺乳類じゃない。

丁度、ジュラシックパークに出てきたヴェロキラプトルを思わせる(特にリュコン)その顔は、鳥類か爬虫類の様な、感情のない、本能と憎しみと闘争心のみで生きているかのようだ。主人公も含め暖かい血が通っていない、例え優しい言葉を吐いていても、その表情からは温もりが感じ取れないのだ。例え肉親であろうとも自分以外の人間を絶対に信用してはいけないという鉄の決意が感じられる。全体に広がる憎しみと冷酷がこの作品の生命線である。

古代文明というものは私にとってエジプトにしろギリシャにしろマヤにしろ、光り輝く黄金の叡智のイメージがあり、薄汚れた現代社会とは対極をなす神々しいものであった。ところが、この漫画は、その古代文明を人間の醜さ、憎悪の究極を表すものとして徹底的に弾劾している点がまず衝撃的であった。思わず目をそむけたくなる様な残忍さがそこにある。希望も救済も未来も全くない世界がそこにある。この世界が現代につながっているとしたら、我々の祖先は一体、どれほど両手を血に染めて来たのかと暗澹たる思いがする。考えてみれば、私の思い描いていた古代文明は壮大な神殿やピラミッド、壁画や彫刻など物質ばかりであり、そこに暮らす人間たちを思い描いたとしても、せいぜい王様か神官か学者か将軍ぐらいなもので、その下の膨大な庶民や奴隷を思い描くことはないのである。戦を思い描いてもあくまで軍という塊までしか想像力が働かず、その下で血みどろになって倒れている下級兵の屍骸までは考えが及ばないというか、考えたくない。そんな生々しい世界は中世になってからで古代はあくまで光輝く文明の世界でいてほしかった。いや、本当はわかっているが認めたくないし、あえてわざわざ見る必要もないというか意識的に除外していたのかもしれない。スキタイ人が街の人々を殺しまくるシーン、船の上で奴隷たちが反乱を起こし主人をリンチするシーン、それら苛烈極まる光景を幼い子供の様な顔した主人公が時に冷淡に時に笑みさえ浮かべ諦めとともに受け入れるストーリーは、その主人公ともに救いようのない絶望へ読者を叩き込んでくれるだろう。そこには古代の叡智のかけらもない。あるのは人間の醜い欲、虚栄心、そして世界中の人を犠牲にしても自分だけは生き残りたいという悲しい生存本能だけである。4巻で垣間見せる純愛もこのストーリーの流れでは成就する筈もなく無残に打ち砕かれ世界はますます絶望へと向かっていく。それでも主人公は、人は、貴方は生きていかねばならない、人類はずーっとそうやって生きてきたのだから、と作者は自殺社会日本に訴えたいのだろうか。たかがそれぐらいのことで絶望するな、と。

ジュラシック・パーク

ジュラシック・パーク

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD

 

 

 

 


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コメント 2

いぬ

奴隷や殺戮から目をそむけたら歴史なんて勉強できないっす。
だってそれは今の世界でも続いているんだもん。
by いぬ (2008-07-27 20:38) 

はなれざる

いぬさん、コメントありがとうございます。当感想は私個人の「古代文明」という言葉に対する印象であって、歴史全体となると別です。中世やヒットラーに代表される近現代史は虐殺的印象も強いです。だけど古代文明において最初に来るイメージではないです。無論、古代にこそ、そういう部分があることは認識してますし、歴史観は人それぞれですから、この様な部分に注目した古代史というのも面白いと思います。ただ私は古代にロマン(笑)を感じたい人種であり実際はどうかということはどーでもいい人間なんです、すみませんm(_ _)m。歴史学者じゃないからそれでいいかな、と思ってます。っていうか超文明とかオーパーツの方が好きです(←バカ)。

by はなれざる (2008-07-28 01:23) 

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